歯並びがガタガタになってしまう「叢生」は、歯と顎の大きさのバランスが崩れることで起こります。
叢生は見た目だけでなく、虫歯や歯周病のリスクや口臭の原因にもなります。
叢生を矯正するには、ワイヤー矯正やマウスピース矯正などの方法がありますが、今回はマウスピース矯正について詳しく解説します。
マウスピース矯正とは
マウスピース矯正とは、透明なプラスチック製のマウスピースを歯に装着して、歯を少しずつ動かしていく矯正方法です。
マウスピースは2週間ごとに新しいものに交換し、約1年から2年程度で治療を完了します。
マウスピース矯正の代表的なブランドとしては、インビザラインやクリアコレクト、キレイラインなどが挙げられます。
他にも、Zenyum(ゼニュム)やOh my teeth(オーマイティース)など、通院回数を減らしたり、費用を抑えたりすることができるブランドもあります。
自分に合ったブランドを選ぶためには、治したい範囲や予算、通院の頻度などを考慮することが大切です。
マウスピース矯正で叢生を改善する方法
マウスピース矯正で叢生を改善する方法は、主に2つあります。
歯列拡大法
上あごや下あごのアーチを広げて、歯の生えるスペースを増やす方法です。
歯列拡大法では、叢生だけでなく、上下顎前突や後退顎などの咬み合わせの問題も同時に改善することができます。
スリムアーチ法
歯の表面を微量に削って、隙間を作る方法です。
スリムアーチ法では、抜歯をせずに叢生を解消することができます。
ただし、削る量や位置によっては虫歯や感染症のリスクが高まる可能性もあります。
どちらの方法が自分に適しているかは、歯科医師に相談して決めましょう。
マウスピース矯正で叢生を改善する手順
マウスピース矯正で叢生を改善する方法は、以下のような手順です。
- 歯科医師に相談して、自分の歯並びの状態や治療目的を確認する。
- 歯科医師が口腔内の型取りや写真撮影を行って、3D画像を作成する。
- 3D画像をもとに、歯科医師が最適な治療計画を立てて、治療期間や費用、治療後の歯並びのイメージを提示する。
- 治療計画に同意したら、専用の工場でオーダーメイドのマウスピースを作製する。
- マウスピースが届いたら、歯科医師から装着方法や注意点を教えてもらう。
- マウスピースは1日20時間以上装着し、2週間ごとに新しいものに交換する。
- 定期的に歯科医師に診察してもらって、治療の進行具合や問題点を確認する。
- 治療が完了したら、マウスピースを外して、歯並びの変化を確認する。
- 歯並びが戻らないように、リテーナーと呼ばれる保定装置を装着する。
マウスピース矯正のメリット
マウスピース矯正のメリットは、以下のようにまとめられます。
目立たない
マウスピースは透明で薄いので、装着しても目立ちません。
人前で話したり笑ったりしても気にならないでしょう。
取り外せる
マウスピースは自分で取り外すことができます。
食事や歯磨きの際に外せるので、清潔に保つことができます。
また、運動やイベントなどの時にも外せるので、生活に合わせて調整できます。
痛みが少ない
マウスピースは歯に優しく力をかけるので、ワイヤー矯正に比べて痛みや違和感が少ないです。
口内や舌を傷つける心配もありません。
抜歯が不要
マウスピース矯正では、軽度から中等度の場合、基本的に歯を抜く必要がありません。
自分の歯をそのまま美しく整えることができます。
治療期間や治療後のイメージが事前に確認可能
マウスピース矯正では、3D画像を用いて治療計画を立てます。
その際に、治療期間や治療後の歯並びのイメージを事前に確認することができます。
治療の目標や進捗を把握しやすくなります。
通院回数が少ない
マウスピース矯正では、2週間ごとに新しいマウスピースに交換しますが、その際に歯科医師の診察を受ける必要はありません。
自宅で交換することができます。
通院回数は約2か月に1回程度です。
マウスピース矯正のデメリット
マウスピース矯正のデメリットは、以下のようにまとめられます。
装着時間を守らないと効果が現れにくい
マウスピース矯正では、1日に20時間以上、できれば22時間以上の装着時間が必要です。
装着時間が短いと、歯が予定通りに動かないため、治療期間が長くなったり、治療効果が低下したりする可能性があります。
自分で装着や交換の管理をしなければならないため、自己管理能力が求められます。
難しい症例には適応できないことがある
マウスピース矯正は、軽度から中等度の歯並びに向いている矯正方法です。
骨格的に大きなずれがある方や歯の移動量が多くなる方は、マウスピース矯正が向かないことがあります。
ただし、マウスピース矯正ブランドの適応範囲や歯科医師の治療計画によっては、難しい症例でも対応できる場合もあります。
カウンセリングと診断を受けて確認することが大切です。
飲食のたびにマウスピースを外す必要がある
マウスピース矯正では、食事や飲み物を摂る際には必ずマウスピースを外さなければなりません。
装着したまま食べると、マウスピースが破損する危険があります。
また、色の濃い飲み物を飲むと、マウスピースが変色してしまうことがあります。
温度の高い飲み物を飲むと、マウスピースが変形することもあります。
虫歯予防のためにマウスピース装着前は歯磨きが必要
歯が汚れたままマウスピースを装着すると虫歯になってしまうため、マウスピースの装着前は基本的に歯磨きをする必要があります。
歯の汚れは歯周病や口臭の原因にもなるため、きちんとケアしましょう。
マウスピースのケアが必要
人によっては、マウスピースの洗浄が手間だと感じる場合があります。
マウスピースは1日に20時間以上装着するので、どうしても汚れが溜まって臭いの原因になります。
基本的には毎日1回は、柔らかいブラシで洗ったり洗浄剤でつけ置き洗いしたりして清潔にしましょう。
マウスピースの紛失・破損のリスクがある
マウスピースは外食や歯磨きの際に着け外しする機会が多いため、紛失したり、破損したりするリスクがあります。
歯ぎしりや食いしばりをしたり、マウスピースを着けたまま食事をしたりしてマウスピースが壊れると、作り直しが必要です。
マウスピースの作り直しが必要になると、追加料金がかかる場合があるので注意しましょう。
歯と歯の間を削ることがある
歯を動かすスペースを作るために、歯と歯の間をわずかに削ることがあります。
これは「IPR(InterProximal Reduction) 」という、歯を動かすためのスペースを作る方法の一つです。
歯の健康には影響が出ない範囲で歯を削るため、特に問題は起こりません。
奥歯の噛み合わせに問題がでることがある
治療中はマウスピースが常に歯の表面を覆っているため、一部の症例でマウスピースの厚みの分だけ治療終了時に奥歯(臼歯)が噛まなくなってしまうケースがあります。
基本的には、治療終了後に自然と噛めるようになることが多いです。
自然に奥歯が噛まない場合は、部分的にワイヤー矯正をしたり、上下の歯をゴムで引っ張って噛み合わせを整えたりする必要があります。
マウスピース矯正の費用
マウスピース矯正の費用は、以下のような項目に分けられます。
- 矯正前のカウンセリングや検査
- マウスピースの製作
- 矯正中の処置や診察
- 保定期間の保定装置や処置
それぞれの項目にかかる費用は、医院やブランドによって異なりますが、一般的な相場は以下のようになります。
- カウンセリング 0~1万円
- 検査 1万~6.5万円
- マウスピースの製作 60万~80万円
- 処置や診察 0~1万円(通院1回あたり)
- 保定装置 2千~5千円
- 保定期間の処置 0~5千円
これらの費用を合計すると、マウスピース矯正にかかる総額は、約70万~100万円となります。
ただし、部分矯正の場合は、約20万~50万円で済む場合もあります。
また、マウスピース矯正は保険適用外ですので、自費で支払う必要があります。
しかし、分割払いやクレジットカード払いなどの支払い方法もありますので、負担を軽減することができます。
マウスピース矯正の治療期間
マウスピース矯正の治療期間は、個人差や症状の程度によって異なりますが、一般的には約1年から2年程度です。
ただし、以下のような要因で期間が変わる可能性があります。
マウスピースの装着時間
マウスピースは1日に20時間以上装着することが必要です。
装着時間が短いと、歯が予定通りに動かないため、期間が延びたり、効果が低下したりする可能性があります。
歯の移動量
歯の移動量が多いほど、期間が長くなる傾向があります。
叢生の程度や咬み合わせの状態によって、歯の移動量は異なります。
治療計画の変更
治療中に歯並びや咬み合わせに問題が発生した場合や、患者さんの希望に応じて治療計画を変更した場合は、期間が変わる可能性があります。
マウスピースの紛失や破損
マウスピースを紛失したり、破損したりすると、作り直しが必要になります。
作り直しには時間と費用がかかるため、期間が延びる可能性があります。
マウスピース矯正の期間を短くするための注意点
マウスピース矯正の期間を短くするためには、以下のようなことに注意しましょう。
マウスピースをきちんと装着する
マウスピースは1日に20時間以上装着することを心がけましょう。
食事や歯磨き以外では外さないようにしましょう。
マウスピースを清潔に保つ
マウスピースは毎日洗浄して清潔に保ちましょう。
汚れたまま装着すると虫歯や歯周病の原因になるだけでなく、マウスピースの劣化や変色を早める可能性もあります。
定期的に歯科医師に診てもらう
マウスピース矯正では約2か月に1回程度の通院で済みますが、それでも定期的に歯科医師に診てもらうことが大切です。
歯科医師は治療の進行具合や問題点をチェックしてくれます。
また、質問や相談も気軽にできます。
マウスピースを大切に扱う
マウスピースは外食や歯磨きの際に外すことが多いため、紛失や破損のリスクがあります。
外したときは専用のケースに入れて保管しましょう。
また、食べ物や飲み物を口に入れたまま装着しないようにしましょう。
まとめ
マウスピース矯正は、叢生を改善するための効果的で快適な矯正方法です。
目立たなくて取り外せるマウスピースで、自分の歯を美しく整えることができます。
叢生に悩んでいる方は、ぜひ歯科医師に相談してみてください。