農地で太陽光発電を行うというのは、どのような仕組みなのでしょうか？ また、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか？ 今回は、農地で太陽光発電を行う方法と、その設置の手順について詳しくご紹介します。
農地で太陽光発電を行う方法
農地で太陽光発電を行う方法には、大きく分けて2種類あります。一つは、農地全体を転用して太陽光パネルを設置する方法です。もう一つは、農地に支柱を立てて、上部空間に太陽光パネルを設置し、下部で営農を継続しながら発電する方法です。後者の方法は、営農型太陽光発電と呼ばれ、ソーラーシェアリングとも呼ばれます。
農地全体を転用する方法
農地全体を転用する方法は、農業をやめて、太陽光発電事業に専念する方法です。農地に太陽光パネルを設置するには、農地法に基づく農地転用許可が必要です。農地転用許可を受けるには、農業振興地域計画に基づいて、都道府県知事や市町村長の承認を得る必要があります。農地転用許可を受けた後は、太陽光パネルの設置や、電力会社との契約などを行います。
営農型太陽光発電（ソーラーシェアリング）の方法
営農型太陽光発電（ソーラーシェアリング）の方法は、農業生産と電力売電の両方を可能にする方法です。農地に支柱を立てて、上部空間に太陽光パネルを設置し、下部で営農を継続しながら発電する方法です。農地に支柱を立てるには、農地法に基づく農地転用許可が必要です。農地転用許可を受けるには、農地全体を転用する方法と同様に、農業振興地域計画に基づいて、都道府県知事や市町村長の承認を得る必要があります。農地転用許可を受けた後は、太陽光パネルの設置や、電力会社との契約などを行います。また、営農型太陽光発電の場合は、営農計画書や営辷への影響見込み書などを作成し、営農の状況を報告する必要があります。
農地で太陽光発電を行うメリット
農地で太陽光発電を行うメリットは、以下のようなものがあります。
再生可能エネルギーの導入により、環境にやさしい農業を実現できる
太陽光発電は、太陽の光を電気に変換する再生可能エネルギーの一種です。再生可能エネルギーとは、自然界に存在するエネルギー源（太陽、風、水、地熱など）を利用して発電するエネルギーのことです。再生可能エネルギーは、化石燃料（石油、石炭、天然ガスなど）に比べて、二酸化炭素や有害物質の排出量が少なく、地球温暖化や大気汚染の原因となる温室効果ガスの削減に貢献できます。また、化石燃料は有限の資源であり、枯渇のリスクがありますが、再生可能エネルギーは無尽蔵の資源であり、安定的なエネルギー供給が期待できます。農地で太陽光発電を行うことで、農業に必要な電力を自給自足できるだけでなく、余剰電力を売電することで、再生可能エネルギーの普及にも貢献できます。
太陽光発電の電力を自家消費することで、農業経営のコスト削減や安定化が期待できる
農業には、機械や設備の動作や、施設の照明や空調などに電力が必要です。農業経営における電力費は、重要な経費の一つです。農地で太陽光発電を行うことで、発電した電力を自家消費することができます。自家消費することで、電力会社からの電力購入量を減らすことができ、電力費のコスト削減や安定化が期待できます。また、自家消費する電力は、電力会社からの電力に比べて、安定性や品質が高いと言われています。電力会社からの電力は、送電線や変圧器などの設備を経由して供給されるため、電圧や周波数の変動や、停電や落雷などのトラブルの影響を受ける可能性があります。自家消費する電力は、発電した場所から直接使用するため、電力の品質や安定性が高く、農業機械や設備の故障や劣化の防止にも有効です。
太陽光発電の電力を売電することで、農業収入に加えて、安定した収入源を得ることができる
農地で太陽光発電を行うことで、自家消費するだけでなく、余剰電力を電力会社に売電することができます。売電することで、農業収入に加えて、安定した収入源を得ることができます。売電する際には、電力会社との契約が必要です。契約の種類には、固定価格買取制度（FIT）と、新電力との自由契約があります。FITとは、再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定期間、一定価格で買い取る制度です。FITの価格は、発電方式や設備容量などによって異なりますが、太陽光発電の場合は、2023年度の価格は、10kW未満の設備容量であれば、1kWhあたり18円、10kW以上の設備容量であれば、1kWhあたり13円です。FITの期間は、太陽光発電の場合は、設備容量に関係なく20年間です。自由契約とは、新電力と呼ばれる電力会社と、自由に価格や期間を決めて契約する制度です。自由契約の価格は、新電力との交渉次第ですが、FITよりも高い価格で売電できる可能性があります。自由契約の期間は、契約内容によって異なりますが、FITよりも短い期間であることが多いです。
営農型太陽光発電（ソーラーシェアリング）の場合は、農地の有効活用や、作物の品質向上や多様化などの効果も期待できる
営農型太陽光発電（ソーラーシェアリング）とは、農地に支柱を立てて、上部空間に太陽光パネルを設置し、下部で営農を継続しながら発電する方法です。営農型太陽光発電の場合は、農地全体を転用する方法と比べて、農地の有効活用や、作物の品質向上や多様化などの効果も期待できます。農地の有効活用とは、農地の空間を二重に利用することで、農地の生産性を高めることです。営農型太陽光発電では、上部空間で太陽光発電を行い、下部空間で農業生産を行うことで、農地の空間を有効に活用できます。作物の品質向上とは、太陽光パネルが作物に与える光や温度の変化によって、作物の生育や収穫量に影響を与えることです。営農型太陽光発電では、太陽光パネルの設置角度や間隔などを調整することで、作物に適した光や温度の環境を作ることができます。例えば、夏場は太陽光パネルが作物に日陰を作ることで、高温や乾燥のストレスを軽減できます。冬場は太陽光パネルが作物に温室効果を与えることで、低温や霜害のリスクを減らすことができます。太陽光パネルが作物に与える影響は、作物の種類や栽培方法によっても異なりますが、一般的には、作物の品質向上や収穫量の増加につながると言われています。作物の多様化とは、太陽光パネルが作物に与える影響を利用して、様々な作物を栽培することです。営農型太陽光発電では、太陽光パネルの下部空間で、通常の農地では栽培できないような作物を栽培することができます。例えば、日陰を好む作物や、高温や乾燥に弱い作物などです。また、太陽光パネルの下部空間で、異なる作物を混植することもできます。混植とは、異なる作物を同じ畝や畑で栽培することです。混植には、作物間の相互作用によって、害虫や病気の防除や、土壌の改良や、収穫量の増加などの効果が期待できます。営農型太陽光発電では、太陽光パネルの下部空間で、作物の多様化を図ることができます。
農地で太陽光発電を行うデメリット
農地で太陽光発電を行うデメリットは、以下のようなものがあります。
農地転用許可の取得が困難である場合がある
農地で太陽光発電を行うには、農地法に基づく農地転用許可が必要です。農地転用許可を受けるには、農業振興地域計画に基づいて、都道府県知事や市町村長の承認を得る必要があります。しかし、農地転用許可の取得は、地域や条件によっては、困難である場合があります。例えば、農地が農業振興地域に指定されている場合や、農地が農業集落の中心部にある場合などです。農業振興地域とは、農業の発展や保全を図るために、都道府県が指定する地域のことです。農業振興地域では、農地の転用は原則として認められず、特別な理由がない限り、農地転用許可は下りません。農業集落とは、農業を営む人々が居住する地域のことです。農業集落では、農地の転用は、農業の継続や集落の生活に支障をきたす恐れがあるため、厳しく審査されます。
太陽光パネルの設置や維持管理にコストがかかる
太陽光パネルの設置や維持管理には、コストがかかります。太陽光パネルの設置には、太陽光パネルや支柱などの資材費や、工事費や設計費などの人件費がかかります。太陽光パネルの維持管理には、清掃や点検や修理などの費用がかかります。太陽光パネルの設置や維持管理にかかるコストは、太陽光パネルの種類や規模や場所などによって異なりますが、一般的には、数百万円から数千万円の範囲であると言われています。太陽光パネルの設置や維持管理にかかるコストは、売電収入や自家消費効果などで回収できる可能性がありますが、初期投資が大きいため、回収には時間がかかる場合があります。
太陽光パネルの故障や盗難などのリスクがある
太陽光パネルは、機械や電子部品で構成されているため、故障や損傷のリスクがあります。太陽光パネルは、自然災害や落雷や火災などの外的要因や、経年劣化や品質不良などの内的要因によって、故障や損傷する可能性があります。太陽光パネルが故障や損傷すると、発電量が低下したり、発電が停止したりすることがあります。太陽光パネルの故障や損傷は、修理や交換などの対応が必要であり、コストや時間がかかる場合があります。太陽光パネルは、高価な資産であるため、盗難のリスクもあります。太陽光パネルは、農地に設置されているため、人目につきやすく、盗難の対象となる可能性があります。太陽光パネルが盗難されると、発電ができなくなるだけでなく、再設置や警察への届出などの対応が必要であり、コストや時間がかかる場合があります。太陽光パネルの故障や盗難などのリスクは、保険や防犯対策などで軽減できる可能性がありますが、完全に防ぐことはできません。
太陽光パネルが風景や景観に悪影響を与える可能性がある
農地に太陽光パネルを設置すると、周囲の自然や文化との調和が失われる可能性があります。太陽光パネルは、農地の緑や茶色とは異なる青や黒の色を持ち、農地の平面や曲線とは異なる直線や角度を持ちます。太陽光パネルは、農地の風景や景観とは違和感を感じさせるものであり、農地の美しさや魅力を損なうことがあります。太陽光パネルが風景や景観に悪影響を与えると、地域の住民や観光客などの目に触れることで、不快感や反感を引き起こすことがあります。太陽光パネルが風景や景観に悪影響を与える可能性は、太陽光パネルの色や形や配置などを工夫することで、軽減できる可能性がありますが、完全に解決することはできません。
農地で太陽光発電を行う設置の手順
農地で太陽光発電を行う設置の手順は、以下のようになります。
1. 農地で太陽光発電を行う方法を選択する。
- 農地で太陽光発電を行う方法には、農地全体を転用する方法と、営農型太陽光発電（ソーラーシェアリング）の方法があります。
- 農地全体を転用する方法は、農業をやめて、太陽光発電事業に専念する方法です。この方法は、発電量が多く、売電収入が高いというメリットがありますが、農地転用許可の取得が困難であったり、風景や景観に悪影響を与えたりするというデメリットもあります。
- 営農型太陽光発電（ソーラーシェアリング）の方法は、農業生産と電力売電の両方を可能にする方法です。この方法は、農地の有効活用や、作物の品質向上や多様化などの効果が期待できるというメリットがありますが、発電量が少なく、売電収入が低いというデメリットもあります。
- 農地で太陽光発電を行う方法を選択する際には、自分の目的や条件に合わせて、メリットとデメリットを比較検討する必要があります。
2. 農地転用許可の申請を行う。
- 農地で太陽光発電を行うには、農地法に基づく農地転用許可が必要です。農地転用許可とは、農地を農業以外の用途に使うために、都道府県知事や市町村長の許可を受けることです。
- 農地転用許可の申請を行うには、以下の手続きが必要です。
- 農地転用許可申請書を作成する。農地転用許可申請書には、農地の所在地や面積や所有者などの基本情報や、太陽光発電の設備容量や設置場所や設置期間などの詳細情報を記入する。
- 農地転用許可申請書に必要な添付書類を用意する。添付書類には、農地の登記簿謄本や地図や写真などの証明書類や、太陽光発電の設計図や見積書や契約書などの関連書類が含まれる。
- 農地転用許可申請書と添付書類を、都道府県知事や市町村長に提出する。提出先は、農地の所在地によって異なる。
- 都道府県知事や市町村長が、農地転用許可申請書と添付書類を審査する。審査には、農業振興地域計画や農業委員会などの関係機関の意見や、地域住民や農業者などの反応などが考慮される。
- 都道府県知事や市町村長が、農地転用許可の可否を決定する。農地転用許可が下りた場合は、農地転用許可証が交付される。農地転用許可が下りなかった場合は、農地転用許可不許可通知書が交付される。
- 農地転用許可の申請には、時間や費用がかかる場合があります。一般的には、申請から許可までに、数ヶ月から数年の期間がかかると言われています。また、申請には、申請書や添付書類の作成や提出にかかる費用や、設計や工事にかかる費用などが必要です。農地転用許可の申請を行うには、時間や費用を考慮する必要があります。
3. 太陽光パネルの設置や、電力会社との契約などを行う。
- 農地転用許可を受けた後は、太陽光パネルの設置や、電力会社との契約などを行います。
- 太陽光パネルの設置には、以下の手続きが必要です。
- 太陽光パネルの設計や工事を行う業者を選ぶ。業者の選択には、価格や品質や信頼性やアフターサービスなどを比較検討する必要があります。
- 業者と太陽光パネルの設計や工事に関する契約を結ぶ。契約には、太陽光パネルの種類や規模や配置や角度などの設計内容や、工事の期間や費用や保証などの工事内容を明記する必要があります。
- 業者が太陽光パネルの設置や接続や試運転などの工事を行う。工事には、農地の整地や支柱の設置や太陽光パネルの取り付けや配線などが含まれる。
- 業者が太陽光パネルの設置や工事の完了を報告する。報告には、太陽光パネルの設置や工事に関する書類や写真や検査結果などが含まれる。
- 電力会社との契約には、以下の手続きが必要です。
- 電力会社との契約の種類を選ぶ。契約の種類には、固定価格買取制度（FIT）と、新電力との自由契約があります。
- FITとは、再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社に一定期間、一定価格で買い取ってもらう制度です。FITの価格や期間は、発電方式や設備容量などによって決まります。FITの利点は、売電価格が高く、売電期間が長いということです。FITの欠点は、電力会社との契約が煩雑で、発電量に上限があるということです。
- 自由契約とは、新電力と呼ばれる電力会社と、自由に価格や期間を決めて契約する制度です。自由契約の利点は、売電価格が高く、発電量に上限がないということです。自由契約の欠点は、売電期間が短く、価格が変動する可能性があるということです。
- 電力会社との契約の種類を選ぶ際には、自分の目的や条件に合わせて、利点と欠点を比較検討する必要があります。
- 電力会社との契約を申し込む。契約を申し込むには、電力会社に連絡して、契約内容や必要書類などを確認する必要があります。必要書類には、太陽光発電の設備容量や設置場所や設置期間などの情報を記入した申込書や、太陽光パネルの設置や工事に関する書類や写真などが含まれる。
- 電力会社が契約を審査する。審査には、太陽光発電の設備容量や設置場所や設置期間などの情報や、太陽光パネルの設置や工事に関する書類や写真などが参考にされる。
- 電力会社が契約の可否を決定する。契約が成立した場合は、契約書が交付される。契約が成立しなかった場合は、契約不成立通知書が交付される。
- 太陽光パネルの設置や、電力会社との契約などを行うには、時間や費用がかかる場合があります。一般的には、設置から売電までに、数ヶ月から数年の期間がかかると言われています。また、設置や契約には、設計や工事や申込みや審査などにかかる費用が必要です。太陽光パネルの設置や、電力会社との契約などを行うには、時間や費用を考慮する必要があります。
4. 営農型太陽光発電の場合は、営農計画書などを作成し、営農の状況を報告する。
- 営農型太陽光発電の場合は、農地転用許可を受けた後も、営農計画書などを作成し、営農の状況を報告する必要があります。
- 営農計画書とは、営農型太陽光発電を行う農地で、どのような作物を栽培するか、どのような栽培方法を採用するか、どのような収穫量や収入を見込むかなどを記した計画書です。営農計画書は、農地転用許可の申請時に提出する必要があります。
- 営農計画書は、農業振興地域計画や農業委員会などの関係機関によって、営農型太陽光発電の効果や問題点などを評価されるものであり、営農型太陽光発電の継続や改善に影響するものです。
- 営農型太陽光発電の場合は、営農計画書などを作成し、営農の状況を報告するには、時間や費用がかかる場合があります。一般的には、作成や提出には、数時間から数日の期間がかかると言われています。また、作成や提出には、作物の栽培や収穫や分析などにかかる費用が必要です。営農型太陽光発電の場合は、営農計画書などを作成し、営農の状況を報告するには、時間や費用を考慮する必要があります。
まとめ
農地で太陽光発電を行うというのは、農業と再生可能エネルギーの両立を目指す取り組みです。農地全体を転用する方法と、営農型太陽光発電（ソーラーシェアリング）の方法があり、それぞれにメリットがあります。農地で太陽光発電を行うには、農地転用許可が必要であり、設置の手順に従って進める必要があります。農地で太陽光発電を行うことで、環境にやさしい農業を実現し、農業経営の安定化や収入向上に貢献できるかもしれません。.
