歯並びが悪いと、見た目だけでなく、噛み合わせや発音にも影響が出ることがあります。
歯並びを改善するためには、歯科矯正を受けることが一般的です。
しかし、歯科矯正にはさまざまな方法があり、どれを選ぶか迷ってしまう方も多いでしょう。
今回は、歯科矯正の中でも人気の高いマウスピース矯正とワイヤー矯正について、それぞれの特徴やメリット・デメリット、費用、期間などを比較してご紹介します。
自分に合った歯科矯正を選ぶための参考にしてください。
マウスピース矯正とは?
マウスピース矯正とは、透明で取り外し可能なプラスチック製のマウスピースを装着して、歯を少しずつ動かしていく歯科矯正の方法です。
マウスピースは段階的に新しいものに交換していきます。
マウスピース矯正の代表的なブランドとしては、インビザラインやクリアコレクト、キレイラインなどが挙げられます。
他にも、Zenyum(ゼニュム)やOh my teeth(オーマイティース)など、通院回数を減らしたり、費用を抑えたりすることができるブランドもあります。
マウスピース矯正のメリット
マウスピース矯正には以下のようなメリットがあります。
無色透明で目立ちにくい
マウスピースは歯にぴったりとフィットする透明なプラスチック製です。
そのため、装着していても目立ちにくく、周囲に気づかれにくいです。
見た目にこだわる方や、仕事柄目立つ矯正装置を付けることが難しい方におすすめです。
歯磨きや食事の時に取り外せる
マウスピースは取り外しができるので、歯磨きや食事の時には外して通常通り行えます。
歯磨きがしやすいので、口腔内を清潔に保ちやすく、虫歯や歯周病の予防にもなります。
食事の時も食べ物が装置に挟まったりせず、食べにくさを感じません。
金属アレルギーでも使用できる
マウスピースはプラスチック製なので、金属アレルギーの方でも安心して使用できます。
ワイヤー矯正では金属製の装置を使用するため、金属アレルギーの方は治療ができない場合があります。
痛みが少ない
マウスピースは歯や歯茎を優しく包み込むような形状で、歯を強く引っ張ったり押したりすることがありません。
そのため、ワイヤー矯正と比べて痛みを感じにくいと言われています。
ただし、個人差はありますし、最初のうちは違和感があるかもしれません。
マウスピース矯正のデメリット
一方で、マウスピース矯正には以下のようなデメリットもあります。
装着時間を守らないと効果が現れにくい
マウスピース矯正は、1日に20~22時間以上の装着時間が必要です。
食事と歯ブラシの時間以外は、常にマウスピースを装着しなければなりません。
自分で取り外せるため、外している時間がつい長くなりがちです。
マウスピースの装着時間が短いと歯が動かないため、治療期間が長くなってしまうことがあります。
難しい症例には適応できないことがある
骨格的に大きなずれがある方や歯の移動量が多くなる方は、マウスピース矯正が向かないことがあります。
ただし、マウスピース矯正ブランドの適応範囲、歯科医師がマウスピース矯正をどのような計画の下で使用するかによって、難しい症例への適応の可否は異なります。
難しい症例に適用できるマウスピース矯正ブランドだけで治療をする歯科医師もいれば、ワイヤー矯正と併用して治療を進める歯科医師もいます。
マウスピース矯正ができるかを知るには、カウンセリングと診断を受けるのがおすすめです。
飲食のたびにマウスピースを外す必要がある
基本的にマウスピースを着けたまま食事はできません。
装着したまま食べると、マウスピースが破損する危険があります。
また、色の濃い飲み物を飲むと、マウスピースが変色してしまうことがあります。
温度の高い飲み物を飲むと、マウスピースが変形することもあります。
虫歯予防のためにマウスピース装着前は歯磨きが必要
歯が汚れたままマウスピースを装着すると虫歯になってしまうため、マウスピースの装着前は基本的に歯磨きをする必要があります。
歯の汚れは歯周病や口臭の原因にもなるため、きちんとケアしましょう。
マウスピースのケアが必要
人によっては、マウスピースの洗浄が手間だと感じる場合があります。
マウスピースは1日に20時間以上装着するので、どうしても汚れが溜まって臭いの原因になります。
基本的には毎日1回は、柔らかいブラシで洗ったり洗浄剤でつけ置き洗いしたりして清潔にしましょう。
マウスピースの紛失・破損のリスクがある
マウスピースは外食や歯磨きの際に着け外しする機会が多いため、紛失したり、破損したりするリスクがあります。
歯ぎしりや食いしばりをしたり、マウスピースを着けたまま食事をしたりしてマウスピースが壊れると、作り直しが必要です。
マウスピースの作り直しが必要になると、追加料金がかかる場合があるので注意しましょう。
歯と歯の間を削ることがある
歯を動かすスペースを作るために、歯と歯の間をわずかに削ることがあります。
これは「IPR(InterProximal Reduction) 」という、歯を動かすためのスペースを作る方法の一つです。
歯の健康には影響が出ない範囲で歯を削るため、特に問題は起こりません。
奥歯の噛み合わせに問題がでることがある
治療中はマウスピースが常に歯の表面を覆っているため、一部の症例でマウスピースの厚みの分だけ治療終了時に奥歯(臼歯)が噛まなくなってしまうケースがあります。
基本的には、治療終了後に自然と噛めるようになることが多いです。
自然に奥歯が噛まない場合は、部分的にワイヤー矯正をしたり、上下の歯をゴムで引っ張って噛み合わせを整えたりする必要があります。
歯根が露出する危険性がある
ワイヤー矯正でも起こりうるリスクですが、歯を移動させた先に歯槽骨(歯を支える骨)がないと、歯根が露出してしまうことがあります。
歯列矯正では歯に弱い力をかけてゆっくりと動かします。
しかし、歯を動かす順番を考えなかったり、スペースを確保せずに歯を並べようとしたり、無理な矯正計画で治療を行うと歯根露出のリスクが高くなります。
ワイヤー矯正とは?
ワイヤー矯正とは、歯の表面にブラケットと呼ばれる金属製の装置を固定し、そこにワイヤーを通して歯を動かす歯科矯正の方法です。
ワイヤーは定期的に調整されます。
ワイヤー矯正のメリット
ワイヤー矯正には以下のようなメリットがあります。
ほとんどすべての症例に適応できる
ワイヤー矯正は、歯の動き方や移動量に関係なく、どんな歯並びや噛み合わせの問題にも対応できます。
重度の出っ歯や受け口、叢生など、マウスピース矯正では治療が難しい場合でも、ワイヤー矯正なら治療可能です。
短期間で効率よく治療できる
ワイヤー矯正は、ワイヤーが元に戻ろうとする力を利用して歯を動かします。
そのため、マウスピース矯正よりも強い力がかかり、歯が動くスピードも速いです。
同じ程度の歯並びの症例でも、マウスピース矯正よりもワイヤー矯正の方が治療期間が短くなる場合があります。
細かな調整が可能
ワイヤー矯正は、1~2か月ごとに通院して、歯科医師によってワイヤーやブラケットの調整をしてもらいます。
その際に、歯の動き具合や治療の進み具合に応じて、細かな調整を行うことができます。
マウスピース矯正では、最初に治療計画を立ててからマウスピースを作成するため、途中で大きく変更することは難しいです。
ワイヤー矯正のデメリット
一方で、ワイヤー矯正には以下のようなデメリットもあります。
装置が目立つ
ワイヤー矯正は歯の表側に装置を取り付けるため、見た目に目立ってしまいます。
特に金属製の装置は光沢があるため、笑ったり話したりするときに気になるかもしれません。
見た目にこだわる方や、仕事柄目立つ矯正装置を付けることが難しい方には不向きです。
痛みや違和感がある
ワイヤー矯正は歯に強い力がかかるため、痛みや違和感を感じることが多いです。
特に装置の取り付けや交換の直後は、歯や歯茎が圧迫されて痛むことがあります。
また、ブラケットやワイヤーが口内を刺激して、唇や頬の内側に傷ができることもあります。
食べ物の制限がある
ワイヤー矯正は装置が固定されているため、食べ物の制限があります。
硬いものや粘着性のあるものは、ブラケットやワイヤーを壊したり外したりする恐れがあるため、避けなければなりません。
例えば、アメやキャラメル、ポップコーンやナッツなどはNGです。
口腔ケアが大変
ワイヤー矯正は装置が細かく複雑な形をしているため、口腔ケアが大変です。
食べ物が装置に挟まったり残ったりしやすく、普通の歯ブラシでは落としきれないことがあります。
そのため、専用の歯ブラシやフロスなどを使って丁寧に掃除する必要があります。
口腔ケアを怠ると、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
金属アレルギーの方は注意が必要
ワイヤー矯正は金属製の装置を使用することが多いため、金属アレルギーの方は注意が必要です。
金属アレルギーの方は、金属製の装置を付けると口内炎や発疹などのアレルギー症状が出ることがあります。
金属アレルギーの方は、セラミックやプラスチックなどの非金属製の装置を選ぶか、歯科医師に相談してください。
緊急処置が必要になることがある
ワイヤー矯正は装置が壊れたり外れたりすることがあるため、緊急処置が必要になることがあります。
例えば、ブラケットが外れたり、ワイヤーが切れたり、ゴムが外れたりすることがあります。
このような場合は、すぐに歯科医院に連絡して対処してもらう必要があります。
マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いは?
マウスピース矯正とワイヤー矯正は同じ歯科矯正ですが、矯正装置・矯正期間・費用が異なります。
違いを把握したうえで自分の症状・目的・予算に合わせて治療方法を選択することが大切です。
以下に、マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いをまとめました。
項目 | マウスピース矯正 | ワイヤー矯正 |
矯正装置 | 透明で取り外し可能なプラスチック製のマウスピース | 歯に固定された金属やセラミックなどのブラケットとワイヤー |
矯正期間 | 1〜3年程度 | 1〜2年程度 |
費用 | 全体矯正で約80〜110万円 | 全体矯正で約80〜120万円 |
見た目 | 目立ちにくい | 目立つ |
痛み | 少ない | 多い |
食べ物の制限 | なし(食事時に外す) | あり(硬いものや粘着性のものは避ける) |
口腔ケア | 比較的楽(マウスピースを外して歯磨き) | 比較的大変(装置に挟まった食べ物を落とす) |
適応範囲 | 軽度から中度の歯並びや噛み合わせの改善に向く | ほとんどすべての歯並びや噛み合わせの改善に向く |
まとめ
マウスピース矯正は、見た目が目立たないことや取り外しができることがメリットですが、装着時間が長いことや重度の歯並びや噛み合わせの改善には向かないことがデメリットです。
一方、ワイヤー矯正は、ほとんどすべての症例に適応できることや短期間で効率よく治療できることがメリットですが、装置が目立つことや痛みや違和感があることがデメリットです。
どちらの方法も一長一短がありますので、ご自身の歯並びや噛み合わせの状態・治療の目的・予算などを考慮して、最適な治療方法を選ぶことが大切です。
自分に合った歯科矯正を選ぶためには、歯科医院で診察・カウンセリングを受けることが大切です。
歯科医師に相談して、自分の歯並びや噛み合わせの状態・治療の目的・予算などを考慮して、最適な治療方法を決めましょう。