下顎後退とは、上顎に対して下顎が内側に引っ込んでいる状態のことです。
下顎後退になると、見た目にも影響が出るだけでなく、噛み合わせや呼吸などの機能面でも問題が起こりやすくなります。
下顎後退を治すには、歯科矯正や外科的手術などの方法がありますが、今回はマウスピース矯正という治療法について紹介します。
マウスピース矯正とは?
マウスピース矯正とは、透明なプラスチック製のマウスピース(アライナー)を歯に装着して、歯や顎の位置を徐々に動かしていく治療法です。
マウスピース矯正の代表的なブランドとしては、インビザラインやクリアコレクト、キレイラインなどが挙げられます。
他にも、Zenyum(ゼニュム)やOh my teeth(オーマイティース)など、通院回数を減らしたり、費用を抑えたりすることができるブランドもあります。
マウスピース矯正のメリット
マウスピース矯正は、透明なプラスチック製のマウスピースを歯に装着して、歯や顎の位置を徐々に動かしていく治療法です。
マウスピース矯正には、以下のようなメリットがあります。
見た目が目立たない
マウスピース矯正の最大のメリットは、見た目が目立たないことです。
マウスピースは透明で薄いので、装着しても他人から気づかれにくいです。
ワイヤーやブラケットを使った矯正治療では、笑ったり話したりするときに装置が見えてしまうことがありますが、マウスピース矯正ならそんな心配はありません。
見た目にこだわる方や、仕事や学校で人と接する機会が多い方におすすめです。
取り外しができる
マウスピース矯正のもう一つのメリットは、取り外しができることです。
マウスピースは自分で装着したり外したりすることができます。
食事や歯磨きのときは外して、それ以外の時間は装着するようにします。
これにより、食べ物が装置に詰まったり、歯磨きがしにくくなったりすることを防ぐことができます。
また、大切なイベントや写真撮影などのときは一時的に外すこともできます。
ただし、1日に20~22時間以上は装着しなければならないので、外しすぎると治療効果が低下することに注意してください。
痛みや違和感が少ない
マウスピース矯正のさらにもう一つのメリットは、痛みや違和感が少ないことです。
マウスピースはプラスチック製で滑らかなので、口内を傷つけたり刺激したりすることがありません。
ワイヤーやブラケットを使った矯正治療では、口内炎や粘膜の擦れ傷などのトラブルが起こることがありますが、マウスピース矯正ならそんな心配はありません。
また、マウスピースは歯を少しずつ動かすので、歯や顎にかかる力も強くありません。
そのため、装置を交換した直後や調整した直後でも、痛みや違和感を感じにくいです。
マウスピース矯正のデメリット
しかし、マウスピース矯正にもデメリットがあります。
以下に主なデメリットを挙げます。
装着時間が長い
マウスピース矯正では、1日に20~22時間以上の装着時間が必要です。
食事や歯磨き以外は常に装着しなければなりません。
自分で取り外せるため、外している時間が長くなりやすいです。
装着時間が短いと歯が動かないため、治療期間が長くなってしまうこともあります。
難しい症例には適応できないことがある
骨格的に大きなずれや歯の移動量が多い場合は、マウスピース矯正だけでは適応できないこともあります。
その場合はワイヤー矯正や外科的手術など他の治療法を併用する必要があります。
マウスピース矯正ができるかどうかは、歯科医師に相談して診断してもらう必要があります。
飲食のたびに外す必要がある
マウスピース矯正では、食事や飲み物を摂るときは必ず外さなければなりません。
装着したまま食べると、マウスピースが破損する危険があります。
また、色の濃い飲み物を飲むと、マウスピースが変色してしまうこともあります。
温度の高い飲み物を飲むと、マウスピースが変形することもあります。
虫歯予防のために歯磨きやマウスピースのケアが必要
歯が汚れたままマウスピースを装着すると虫歯になってしまうため、マウスピースの装着前は必ず歯磨きをする必要があります。
また、マウスピースも毎日洗浄剤で洗ったりブラシで磨いたりして清潔に保つ必要があります。
歯磨きやマウスピースのケアが面倒だと感じる人もいるかもしれません。
マウスピースの紛失・破損のリスクがある
マウスピースは外食や歯磨きの際に外す機会が多いため、紛失したり破損したりするリスクがあります。
特に小さな子供やペットがいる家庭では注意が必要です。
マウスピースの紛失や破損が起こると、作り直しが必要になります。
作り直しには追加料金がかかる場合もあります。
歯と歯の間を削ることがある
歯を動かすスペースを作るために、歯と歯の間をわずかに削ることがあります。
これは「IPR(InterProximal Reduction) 」という方法で、エナメル質の厚さの範囲内で0.2~0.5㎜ほど歯の側面を削ります。
この方法はワイヤー矯正でも行われており、歯の健康には影響しません。
しかし、健康な歯を削ることに抵抗感を持つ人もいるかもしれません。
奥歯の噛み合わせに問題が出ることがある
治療中はマウスピースが常に歯の表面を覆っているため、一部の症例でマウスピースの厚みの分だけ治療終了時に奥歯(臼歯)が噛まなくなってしまうケースがあります。
基本的には治療終了後に自然と噛めるようになりますが、自然に噛めない場合はワイヤー矯正やゴムで噛み合わせを整える必要があります。
歯根が露出する危険性がある
ワイヤー矯正でも起こりうるリスクですが、歯を移動させた先に歯槽骨(歯を支える骨)がないと、歯根が露出してしまうことがあります。
これは「根尖性透明帯」と呼ばれる現象で、歯の感度が高くなったり、歯が抜けたりする危険性があります。
このリスクを回避するためには、治療前にレントゲンやCTで歯槽骨の状態を確認し、歯の移動量や方向を適切に設定する必要があります。
マウスピース矯正で下顎後退を改善する方法
マウスピース矯正で下顎後退を改善する方法は、主に2つあります。
上顎の歯を後ろに動かす
上顎の歯を後ろに動かす方法は、上顎の歯列に余裕がある場合に適しています。
上顎の歯を後ろに動かすことで、下顎との差を小さくし、カモフラージュ効果を得ることができます。
ただし、この方法では下顎自体は前に出ませんので、見た目や機能面で十分な改善が得られない場合もあります。
下顎の歯を前に動かす
下顎の歯を前に動かす方法は、下顎自体を前方へ誘導することを目的としています。
下顎の歯を前に動かすことで、下顎骨や筋肉も刺激されて成長促進される可能性があります。
また、気道も広くなり、いびきや睡眠時無呼吸症候群3の改善にも効果的です。
ただし、この方法では上下の歯列に適度な隙間が必要です。
また、治療期間や費用も長く高くなる場合があります。
マウスピース矯正の費用と期間
マウスピース矯正を受ける際に気になるのが、費用と期間です。
マウスピース矯正の費用と期間は、治療範囲やマウスピースの種類、歯並びの状態などによって異なります。
ここでは、マウスピース矯正の費用と期間について、一般的な相場や目安をご紹介します。
マウスピース矯正の費用
マウスピース矯正の費用は、治療範囲やマウスピースの種類によって変わります。
治療範囲は、全体矯正と部分矯正に分けられます。
全体矯正は、上下の歯列全体を矯正する場合で、部分矯正は、前歯や目立つ部分だけを矯正する場合です。
全体矯正の方が部分矯正よりも費用が高くなります。
また、マウスピースの種類には、インビザラインやクリアアライナーなどのブランドがあります。
ブランドによっても費用が異なりますが、一般的にはインビザラインが最も高く、クリアアライナーが最も安いと言われています。
ただし、ブランドだけでなく、歯科医院や地域によっても費用は変わることがあります。
マウスピース矯正の費用は、初診料や診断料、マウスピース代や交換代などを含めて考える必要があります。
また、治療中や治療後に必要な装置やケアも別途料金がかかる場合があります。
そのため、事前に歯科医師に詳しい見積もりをしてもらうことが大切です。
マウスピース矯正の費用の相場は、以下の通りです。
- 全体矯正:約80万円~100万円
- 部分矯正:約10万円~70万円
マウスピース矯正の期間
マウスピース矯正の期間は、歯並びの状態や目標によって異なります。
歯並びが悪いほど期間が長くなりますし、理想的な歯並びを目指すほど期間が長くなります。
また、マウスピースを装着する時間や頻度も期間に影響します。
1日に20~22時間以上装着しなければならないため、外しすぎると期間が延びてしまいます。
マウスピース矯正では、2週間ごとに新しいマウスピースに交換していきます。
そのため、交換回数も期間を計算する際の目安になります。
交換回数は治療範囲や歯並びによって異なりますが、一般的には以下の通りです。
- 全体矯正:約20~40回
- 部分矯正:約10~20回
マウスピース矯正の期間の相場は、以下の通りです。
- 全体矯正:約1~3年
- 部分矯正:約半年~1年半
まとめ
マウスピース矯正は、見た目や機能面で悩む下顎後退の改善方法の一つです。
上顎の歯を後ろに動かす方法や下顎の歯を前に動かす方法がありますが、どちらも個人差や症状によって効果や適応が異なります。
マウスピース矯正で下顎後退を改善したい場合は、歯科医師に相談して最適な治療プランを立てましょう。